今年は戌年。いただいた年賀状も犬をデザインしたものが多かったし、我が家の年賀状も昨年、自費出版した小さな絵本に登場するポチを使った。渡辺リリコさんのイラストだ。ぼくは犬好きである。街で見かけると、つい声をかけてしまいそうになる。見知らぬおじさんにかまわれて、犬もさぞかし迷惑なことだろう。
まずいことに、ぬいぐるみの犬にまで、つい声をかけそうになる。からだが勝手に反応するのだ。「それだけはやめてくれ」とうちのおかみさんにたしなめられるのだが、どうしてもやめられない。あやしいおじさんがいると通報され、きっと、いつか逮捕されるかもしれない……。
昔、うちに一匹の犬がいた。バンという雄の柴犬(たぶん)。たぶん、というのは、車にはねられて、ガソリンスタンドでうずくまっていたのを、叔母が見るに見かねてつれてきた犬だった。だから、血統書などないし、獣医がたぶんそうだろうといっただけだった。ま、そんなことはどうでもいいのだが。だが、柴犬の成犬は、しっぽがくるりと巻いているのがふつうだが、うちのバンは気を抜くと、しっぽがたれてしまう。「バン、しっぽ!」といわれると、あわててしっぽを上にあげるのだった。
バンとは、まるで兄弟のようにつきあってきた。彼が天寿を全うするまでの15年間は、ぼくにとっても、父や母、祖母にとっても幸せな時間だったのだろう。幸せの象徴のような犬だった。
いまでも、ときどき夢を見る。犬、父、母、祖母のいる家の夢だ。もうだれも、この世にはいなくなってしまった。あの夢は、天国なのだろうか?
「Good Dog,Happy Man」は、ジャズギタリストのビル・フリゼールのアルバム。近年、アメリカのフォークミュージックに関心を寄せるフリゼールが、ペダルスチールのグレッグ・リイツ、渋いロックドラムを聴かせるジム・ケルトナーなどと制作した、グッドアメリカンミュージックだ。おだやかで、ゆったりした演奏。聞いていると、ちょっと眠たくなるのもいい感じ。「シェナンドウ」では、ライ・クーダも参加している。こんな音が出せたら最高だろうな。
Good News! 吉祥寺にある絵本屋さん、Tom's Boxから連絡があって、私家版「はるはどこから」が完売、補充注文してくれるとのこと。たった10部だけれど、とてもうれしいです。読んでくださった方、どうもありがとう。