本のメルマガにボブ・ディランのことを書こうと思ったら、いつのまにか中川五郎さんのことになってしまった。いちおう書く前にはテーマというか題材を決めているのだけど、成り行きで書いてしまうので、最初考えていたのとはちがうものが出来てしまう。それはそれで面白いのだけど。
ディラン・フリークではない、ぼくでもディランが作った歌で、好きなものがたくさんある。フォエバー・ヤングもその歌のひとつ。アルバム「プラネット・ウェイブス」が出たのは、まだ高校生のころだったのかな。ザ・バンドと共演しているのがうれしかった。フォエバー・ヤングでディランの語りかけるような歌い方がよくて、よくいっしょに口ずさんでいた。でも、このフォエバー・ヤングの歌詞の重みは、若いぼくにはまだわからなかったんじゃないか。
そう思ったのは、先日、「ヤング@ハート」のステージを見に行ったからだ。
ヤング@ハートは、平均年齢80歳のおじいちゃんとおばあちゃんのコーラスグループ。映画でお馴染みだと思うけれど、演奏する曲がすごい。ローリングストーンズ、ソニックユース、ジミヘン、トーキングヘッズのナンバーを見事に歌う。自分たちの歌というか、80歳近い人たちが歌うと、セックスやドラッグを歌った歌詞もまた違うものに聞こえてくる。正しいことも悪いことも、すべて人間の営みなのだよ、と言っているようだ。ただ単に老人が歌っているからということではなく、その力強さに胸が打たれる。途中、疲れるとステージに用意されたイスに腰掛ける人もいるのに、その歌は力強いのだ。
こんなに涙腺を刺激されたコンサートはなかった。もうボロボロになった。
日本向けに「上を向いて歩こう」から、「リンダリンダ」に続いて、「雨上がりの夜空」が歌われると会場のおじさん、おばさんが立ち上がって大合唱だった。
そして最後に歌われた「フォエバー・ヤング」は、格別だった。この人たちが歌うにふさわしい曲だろうと思う。「永遠に若く」。中川五郎さんは「とこしえに若く」と訳している。
それから数日してから、アーサー・ビナードさんが翻訳した「はじまりの日」という絵本を手に入れた。ディランの「フォエバー・ヤング」の歌詞をもとに、ポール・ロジャースがイラストを手がけ、ディランやディランに影響を与えた人たちのオマージュした絵本。
ディランのことを知っている人には、いろいろなネタさがしが楽しいだろうし、もしディランを知らない子どもが読んでも、フォークソング、歌というものが世代を超えて歌い継がれるものだと理解出来ると思う。
それにしても「フォエバー・ヤング」を「はじまりの日」と訳したアーサー・ビナードという詩人はすごい! フォエバー・ヤングを「はじまりの日」と思いながら、ヤング@ハートの歌を聴くとまた新たな感動がある。