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2010年 06月 23日
6月23日、疲れて落ち込み気味だったが、意を決して新宿御苑前に向かう。一箱で知り合った岩井さんに教えてもらった「シリウス」(http://www.photo-sirius.net/)というギャラリーでの杉山次郎太写真展を見たかったのだ。タイトルは「ポーランドは滅びず」。ワルシャワの人々をスナップした作品が並んでいる。やっぱりワルシャワの女の子はきれいだ。
ぼくがワルシャワに行ったのは、もう20数年前のこと。まだベルリンの壁が崩壊していなかった。1年前に戒厳令が解かれたばかりだった。 最近、ワルシャワに行った人は、その街の変貌ぶりをいろいろと教えてくれる。でも、杉山さんの写真に映っているのは、ぼくの知っているワルシャワのようだった。 いや、ちがうのか……? あのころのワルシャワはもちろん社会主義体制で、西側から来たぼくは街をぶらつくにも緊張していた。もっともたいていはワルシャワ大学の日本語科の学生や知り合いが案内をしてくれたので、なんの問題もなかったのだが。 今、思い出すワルシャワの風景は、静かで美しい街で、季節が夏の終わりから秋だったこともあって、黄昏のヨーロッパという雰囲気だった。通りは人が少なく、車も多くない。そして路面電車……古い映画を見ているような街だった。 慢性的に物資が不足して、どこのレストランに行っても食べられるのはスープだけだし、店頭に商品が並んでいないのだが、ワルシャワの女の子たちはなかなかのお洒落でファッションのセンスもよかった。 ぼくはワルシャワ大学のトメクさんに街を案内してもらった。トメクは日本の軍事について研究をしていて、日本に帰ってから雑誌『丸』を送って欲しいと頼まれて神保町の会社に買いに行ったこともあったっけ。 トメクはロック音楽のファンでワルシャワ中のレコードショップに連れて行ってくれて、ポーランドで注目されているバンドのレコードを教えてくれた。レコードの買い方は日本のシステムとは違っていて、いや、レコードだけではなく、たいていの商品の買い方は日本とは違っていた。 たいていの場合、商品は店員のいるカウンターの後ろ側に並んでいる。客が店員に買いたい商品を告げると、店員は棚からその商品を持ってくる。客は商品を確認して買う。たとえば同じ型の商品がいくつか並んでいるとしても、客は選ぶことは出来ない。店員は、商品を客に見せるのだが、もし客が棚に並んでいる同じ型の製品に替えてほしいといっても、たいていの場合、その希望は叶えられない。店員にとっては商品が売れようが売れまいがどうでもいいらしい。面倒くさいことは断るのが普通のようだった。 トメクは次から次へ、アルバムを店員に持ってこさせた。多分、10数枚になったと思う。「買いますか?」というトメク。目はぜったいに買いなさいといっている。これだけ買っても、日本円に換算すれば2千円ほどだった。満足したような、うらやましそうにしているトメクの顔を見て、ぼくはうしろめたい気持ちになる。 後に日本に留学したトメクに日本のロックについて聞いたことがある。 「日本には、ロックはありませんね。いいと思えるのは、せいぜいCharぐらいかな。社会がちがいます。こんなにめぐまれた社会からはロックは生まれませんよ」とトメクはいった。 あのころのワルシャワに住む若者の息苦しさ、閉塞感は、とてもぼくの理解を超えたところにあるだろう。 のちに在日本大使になったワルシャワ大学のヘンリク・リプシッツ教授の息子さんパーベルともいっしょにワルシャワを歩いた。彼は英米文学を勉強していて、英語が堪能。音楽もロックからジャズ、レゲエと知識が豊富だった。 レゲエのバンドが練習しているかもしれない、とパーベル。「パーティみたいなもんさ、酒やいろんな“もの”もあるしさ。わかるだろ?」といって歩き出した。 だが、とちゅうで気が変わったのか、「音楽に興味があるなら、音楽家の家に行ってみよう」といって、作曲をしている人のアパートに連れて行ってくれた。多分、かなり有名なミュージシャンなんだろう。 彼の部屋の一角はスタジオになっている。映画やCMの音楽を作っているという。 「最近は、便利な楽器を手に入れたので、録音が楽になったよ。苦労して手に入れたんだ。メイド・イン・ジャパンの楽器だよ」 そういって見せてくれたのは、カシオのシンセサイザーだった。それも当時、中学生でも持っていそうな安価なものだった。 彼はそのキーボードを弾いてみせて、「ほら、いろんな音色が出るだろ?」といいながら、自嘲的に笑って、ため息をついた。 ワルシャワの街をひとまわりしてパーベルの部屋に行った。パーベルは、煙草に火をつけて小さなポータブルレコードプレーヤーにドーナツ盤のレコードを載せた。 「ロックのレコードはなかなか手に入らないんだ。だからラジオでウィーンあたりの放送で聴くんだ」 レコードが回り始め、音楽が流れる。ドアーズだった。「Light My Fire」。レイ・マンザレクのオルガンが部屋に満たされて、小さな窓からワルシャワの街に飛んでいく。その音符を追いかけるようにパーベルは空を見つめる。 「Stupid」 パーベルがつぶやいた。 あれから20数年が経った。ワルシャワの街にはブランド店が並び、もちろんレストランには豊富なメニューがあるにちがいない。 それでも杉山さんの写真に写っている若者からは、“自由”の開放感は感じられない。若者には、時代や体制に関係なく閉塞感がつきまとうものなのか? 東の時代にあった閉塞感と、西の一員になった現在ある閉塞感は同じ物なのか違う物なのか? どうなんだろう?
by kyotakyotak
| 2010-06-23 14:39
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