ボブ・ディランのライブ、本当にすごかったなあ、とあらためて新譜『FALLEN ANGELS』を聴きながら思った。良いライブって時間が過ぎるとじんわりと幸福感がよみがえってくるみたいだ。 正直言って、ぼくはあまり熱心にディランを聴いてこなかった。中学生のころ、岡林信康が影響を受けたシンガーとして初めてディランの名前を知ったのかもしれない。いや、そのまえに『風に吹かれて』は知っていた。“フォークの神様”といわれていたと思うけれど、独特な声、くせのある歌い回しが苦手だった。
高校生のころは、ハードロックやグラムロックが全盛だったし、フォークソングを聴く友人はほとんどいなかった。ああ、そうだ、フリーのコピーバンドをやっていた友人が「初期のディランは渋くていいよ」といって聴かせてくれたっけ。たしか『時代は変る』というアルバムだった。それから自分でもアルバムを買うようになった。最初に買ったのは、なんだったろう? よく覚えていないな。でもザ・バンドといっしょにやっている『プラネット・ウェイヴス』は、夢中で聴いた。それから後追いで初期のアルバムを買うようになった。
でもディランは、好きだから聴く、というよりもどこか“聴かなくちゃいけない”ような気分だった。音楽好きの“嗜み”としてね(笑)。知識として聴いていたのかもしれない。
本当にディランが好きだなあと思えたのは、最近のことで、フランク・シナトラの愛唱歌を集めたこの『フォールン・エンジェルズ』も愛聴盤になりそう。オリジナル曲が聴きたいというファンには物足りないかもしれないけれど。
歌がうまいし、サウンドが素晴らしい。ペダルスティールの音がいいの! ウェスタン・スウィングというより、音響派の音といったほうがいいのかな。こんな音楽が作れたら幸せだろうな。ディランはプロデューサーとしてもすごいな。
フランク・シナトラも聴きたくなって、廉価版で出ていた10枚組のCDを引っ張りだしてきた。1915年から1998年までの録音が収録されている。ディランも取り上げているシナトラ初のシングル曲『メランコリー・ムード』も聴くことが出来るお得盤! シナトラもいいです。