書評家「狐」こと山村修さんが亡くなった。日刊ゲンダイで22年間、「狐」の名前で書評コラムを書いていた人だ。
といっても、ぼくは日刊ゲンダイの読者ではなかったし、狐という書評家を知ったのは、「水曜日は狐の書評 ―日刊ゲンダイ匿名コラム 」(筑摩書房)という文庫でだった。
狐さんは、この本で、ということは日刊ゲンダイのコラムで父の翻訳した「クオ・ヴァディス」(福音館書店)を紹介していたのだった。
この本は、父の代表作ともいえる作品だが、福音館書店という児童書の出版社から出ていたし、日刊ゲンダイのコラムでとりあげられるとは思ってもいなかった。
山村さんの書評は、翻訳のことにもふれていて、とてもうれしかったことを覚えている。
昨日、今年7月に出た新書「“狐”が選んだ入門書」(筑摩書房)を買った。言葉、歴史、古典、思想史、美術などの入門書について書かれている。入門書の入門書だ。
選ばれている本が、ぼくなどは決して手にとらないかもしれない本ばかりなので読みにくいかと思ったら、これが、じつにわかりやすい。山村さんが楽しそうに本について語っているのを、静かに聴いている、そんな感じです。
あとがきに書かれた山村さんの読書への思いに、胸が熱くなった。
山村さんについては、今週の、『サンデー毎日』の中野翠「満月雑記帖」に追悼文が載っています。
●ミクシーの日記と同文です。