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2024年 06月 21日
トンネルの向こうに光はあるか ![]() 人生相談への投書は50代の男性からで「世界の理不尽に我慢できない」という内容だった。ロシアの軍事侵攻、イスラエルのガザへの攻撃などの報道を見ていると絶望的な気分になる。それならば新聞報道など見なければよいのだが、それでは社会問題から目を背けているようで気が引ける」という内容だった。 野沢の答えは、「そんなに心配なさっているのなら実際に戦場に出向いて最前線で戦ってくればいい」。そして「そんなことを嘆く前に、今自分が幸せなことに感謝して自分の周りにいる人たちを大切にしましょう」という。 これでは社会で起きている問題に目を背けて、自分の小さな幸福だけを見て暮らせばいい、といっているようなものだ。 野沢直子、朝日新聞に対する批判はネットを中心に散々書かれているので、ここでは改めて触れないけれど、この騒動のあともぼくのモヤモヤは晴れない。 ぼくならば、この相談者の質問にどう答えたのだろう、とずっと考えている。相談者の50代男性のように、ぼくだってウクライナのこと、パレスチナのこと、能登地震のこと、自民党の不正……毎日のニュースを見るたびに暗澹としてしまう。だからといって何ができるわけではない。相談者と同じように心の平穏を保つことが難しい。そしてときには野沢直子がいうように自分の日常に埋没して、音楽を聴いたりヤーレンズの漫才に笑ったりしている。そんなとき、ぼくは山ほどある社会のおかしいことから目を逸らしている。えらそうなことはいえない、ちっぽけな存在なのだ。 そんなふうにくよくよして過ごしていたら、本が届いた。『トンネル』(ルトゥ・モダン 作 バヴア 翻訳 サウザンブックス)だった。イスラエルのルトゥ・モダンが描いたグラフィックノベルで、日本版出版のためにクラウドファンディングをしていた。「グラフィック・ノベル」とは、コマ割りの画面で構成された、海外のマンガ形式の書籍やビジュアルブックのことで、日本のマンガとはちがう表現が面白い。 この本のクラウドファンディングに参加しようと思ったのは、イスラエルの作家が描いているからだった。「暗く先の見えないトンネルのようなイスラエルとパレスチナの関係を描いたイスラエル発のグラフィックノベル」という紹介に惹かれた。 ストーリーは「契約の箱」をめぐってイスラエル・パレスチナの地下にあるいくつものトンネルをめぐる冒険の話だ。 「契約の箱」は、『旧約聖書』に記されている、十戒が刻まれた石板を収めた箱のこと。そうだ! 映画『インディジョーンズ レイダース 失われたアーク《聖櫃》』の聖櫃はこの「契約の箱」のことだった。宗教に無知なぼくはそんなことも知らなかった。 主人公ニリは子どものころ、考古学者だった父親の発掘を手伝いながら、「契約の箱」のありかを示す碑文の読み方を覚えていた。ニリは父親はトンネルを掘り、「契約の箱」を探し続けていたが、1987年、パレスチナでは民衆蜂起(インティファーダ)が起きてしまった。もうすぐ「契約の箱」を発見出来るというところで、発掘を断念することになった。その後 、父親は認知症を患ってしまう。 時が過ぎて、ニリは、馴染みの骨董品コレクターのアブロフがコレクションの全てを、父親の元部下ラフィの大学に引き渡すことを知った。その中には、「契約の箱」の場所を記すあの碑文もあった。ニリはラフィより先に「契約の箱」を見つけ、父親の名誉を取り戻そうと新しいトンネルを掘り発掘を始めるが……。 物語には、ニリの弟で考古学者のブロッシや父親の元部下ラフィ、ユダヤ系入植者グループ、パレスチナ人の兄弟などがからんできて、冒険物語というよりも、複雑な人間模様を描いてる。日本にいてはわからないイスラエルに住むユダヤ人のパレスチナに対する感情、気持ちの温度感も伝わってくる。古物商が商売のためにイスラム国とつながっていたり、なるほどな、と思うことも多かった。 サウザンブックスのクラウドファンディングのサイトに説明があって、ニリがトンネルを掘り、「契約の箱」の発掘をする場所は、第三次中東戦争(1967年)以来、イスラエルが占領する被占領パレスチナのヨルダン川西岸地区ということだった。それを考えながら読むと、ここにトンネルを掘るという設定の深い意味がわかってくる。 翻訳をしているバヴアの紹介を読んだ。「バヴア」は、イスラエルを拠点に活動しているグラフィック・ノベル制作ユニットでメンバーは井川アティアス翔、戸澤典子のふたり。 「バヴア」とはヘブライ語で「反射・反映」という意味で、多種多様な人々が暮らすイスラエルでのふたりの作品作りへの想いが込められている。 いままでイスラエルはユダヤ人の国というイメージしかなかった。解説を読んでみると、ひとくちにユダヤ人といってもアラブ・北アフリカ系(モロッコ、アルジェリア、エジプト、イラクなど)、ロシア系、東欧系、欧米系、南米系、エチオピア系、アジア系など世界中のユダヤ人が住んでいる。もちろんイスラエル建国前のパレスチナの地に暮らしていたパレスチナ人(被占領パレスチナや一部はイスラエル国籍のパレスチナ人としてイスラエルで暮らす)だっているわけだ。 なるほどなあ、イスラエルには、肌の色も目の色も、話している言語も、「ユダヤ人」とひとことで括ることが難しい多種多様な人々が暮らしている。 「パヴア」はその多種多様な人々それぞれの視点を大切にした作品づくりをしているという。 『トンネル』の読後感は、いわゆるエンターテイメントのようなすっきりしたものではなかった。インディジョーンズのような派手な場面があるわけではないけれど、ほろ苦いユーモアが散りばめられていたり、ふつうのイスラエル人の本音が見えてきたりして、クスリと笑わせられたりしながら、いろいろと考えたり感じたりすることが多かった。 ひとことで「面白い!」という言葉で片付けられないのは、毎日のように伝えられるイスラエル政府によるパレスチナ住民へのジェノサイドを見ていると、現実はこの作品世界では抱えきれない、伝えきれない悲しく残酷なものに向かっているとしか思えないからだった。 ぼくにはトンネルの出口があるように思えなかった。光はどこにあるんだろう。 人生相談に投書した50代の男性のように、ぼくもずっとモヤモヤを抱えている。心の安定などとても望めないし、もちろん問題を解決する方法など見つかるはずもない。 これからもモヤモヤを抱えながらも日々を送るしかない。そう、ぼくに出来る唯一のことは、問題が何なのか、何がおかしいのかを知ろうとすることしかないのだ、と思う。 ぼくが「悩める50代男性」に答えるとしたら、「いっしょに悩みましょう」としかいえないな。 田端にあるギャラリー OGU MAGでのつれあいのとも吉の写真展「つかめそうで つかめないもの」は無事に終了しました。ぼくのライブにも、たくさんの人に来ていただき、ありがとうございます。感謝しかありません。 OGU MAG(https://www.ogumag.com/)、素敵な空間です。コーヒーもお菓子も美味しいです。ぜひ、お立ち寄りください。
by kyotakyotak
| 2024-06-21 17:38
| 本
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