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2024年 08月 21日
夏になるとどういうわけか、怪談を読みたくなる。ビジュアルでせまってくるホラー映画は苦手なぼくだけれど、こわがりのくせに怪奇ものを読んだり、怪談を聞いたりするのはけっこう好きだったりする。ブルータスの怪奇特集も買ってしまった。 幼いころは、廊下のくらがりがこわくてトイレに行けなかったほどの臆病なのにね。いまだって得体のしれないものに襲われた悪夢にうなされて飛び起きることだってある。それなのに、こわいもの見たさで怪奇ものについつい目がいってしまう。 先日も書店で、イラストが可愛くおしゃれな装丁で、あんまりこわくなさそうなお化けの本が面出しで置いてあるのに気がついた。 『いろいろな幽霊』(ケヴィン・ブロックマイヤー 著 市田泉 訳 東京創元社)というタイトルで帯には翻訳家の柴田元幸の推薦文が書いてあった。 「理系の緻密な思考力と、文系のしなやかな想像力の奇跡のような共存。」 とある。 本を開いてみてびっくり、一話2ページの短篇が100話もならんでいる。すべてが幽霊をテーマにしたストーリーのようだ。 2、3話読んでみると、たった2ページなのだが、発想がユニークで「ああ、こんな幽霊もいるんだ」と感心してしまう。 この短編をもとにいくらでも長編が書けそうなくらい中身が濃い。もちろん、短いからこその切れ味があって面白いのだろうけれど。 2ページの物語、数分で読んでしまうのだが、読んだあとにしみじみとしてしまったり、切なくなってしまったり、もちろん恐怖を感じたり、ときにとても哲学的であったりする。読み直さないと理解できないものもある。 たとえば第1話「注目すべき社交行事」では、失恋した直後のしぐさを100年以上繰り返し続けている15歳の女の子の幽霊を描いている。悲しくて、どこか滑稽に思えたのだが、同じしぐさを永遠に繰り返すすがたを思い浮かべるとゾッとする。恨みでも怨念でもない「想い」のこわさがある。 「どんなにささやかな一瞬であれ」は、方向音痴の幽霊が幽霊を信じていなかったホットドッグ売りに救われる話。ユーモアと温かさを感じる一編だった。 どの話に登場する幽霊も、柳の下で「うらめしやー」と現れる日本的な幽霊ではないし、いわゆるホラー映画に出てくる恐ろしい容貌の幽霊でもない。じつは、まだ読了していないので、たぶんの話だけど。 だから身の毛もよだつホラーを期待する人にはおすすめできない本だといえそうだ。 読みながら、どこか既視感を覚えた。そうだ、昔、テレビで見ていた『ミステリー・ゾーン』みたいだな、と思った。じっさいにこのドラマをもとに発想した話もあると解説にあった。 それにしてもよくもこんなにたくさんの幽霊を考えたものだ。原題は「THE GHOST VARIATIONS」、「幽霊のバリエーション」のタイトル通りにさまざまな幽霊が現れる。100のバリエーションというのがすごい! この本なら最初から読むのではなくても、思いついたときにページをパラパラとして、好きなところから読むのもよさそうだ。ただし、電車の中で読むと、自分が幽霊電車に乗っている気分になるかもしれない。 実際、いまも周囲を幽霊に囲まれているかもしれないし、すでに自分が幽霊になっているかもしれない。そんな気分にさせてくれる夏向きの本だ。 『いろいろな幽霊』を読み始めたころ、友人の訃報が飛び込んできた。50年来の友人Fさんが亡くなった。 Fさんと知り合ったのはまだ10代のころで、将来のことがまったく見えず、もがいていたときだった。人生に迷って、どこにいったらいいのかわからないときに、いっしょに音楽をやろうと誘ってくれた人だった。 ぼくは、ほとんど部屋にこもってギターばかり弾いていた。夕方になると、 Fさんの部屋に行ってレコードを聴いて、音楽の話をして、いっしょにギターを弾いた。気がつくと夜がしらじらと明けていることもあった。 楽しかったこと、うれしかったこと、腹が立ったこと、いろいろな思い出があるけれど、通夜の席で彼の家族と懐かしい話をしたとき、話題になったのがFさんの「霊感」だった。 そう、霊感の強い人だった。けっしてオカルト好きな人ではなかったのだが、とくに、ぼくといっしょにいると波長がそうなってしまうのか何度も不思議なことが起こった。 いつものようにFさんの部屋で夜遅くまで話し込んでいたのだが、その日はなぜか自分たちが体験したそれぞれのこわい話を話し始めた。いったん話し始めると止まらない。ふたりで百物語をしているようなものだった。 「もうやめにしよう」といっているのに、いつのまにか次の話をはじめてしまう。どうしてそんなにたくさんの話ができたんだろう。まるでこの夜のために怪談話を準備していたみたいだった。すべてFさんが経験したという話だ。 ぼくたちは、まるで何かに憑かれていたようにとめどなく怖い話を思いついた。ふと気がつくとFさんの目には涙が浮かんでいた。もしかしたらぼくも泣いていたのかもしれない。 そのとき「パチーン!」という破裂音が部屋に響いた。なんの音だったのか、いまでもわからない。 もう部屋にはいられなかった。あわてて家を飛び出して、朝方の通りに出た。 あれからどうしたんだったろう。ふたりで明るくなりはじめた町を歩いたのかもしれない。Fさんの車でどこかにドライブしたのかもしれない。 あのときFさんが話してくれた不思議な出来事はまだ覚えている。 Fさんの思い出を語りながら『いろいろな幽霊』に登場する100の幽霊のうちのいくつかは本当にあった話なんじゃないか、なんて思ってしまった。 『いろいろな幽霊』には、人間や動物の幽霊だけでなく「音楽」の幽霊も出て くる。「かくもたくさんの歌」は、世界の歌が尽きてしまってラジオからは雑音しか流れてこなくなった。そして、やがて音楽の幽霊が現れるという話だった。 世界の歌は尽きるのだろうか? いや、もう尽きているのかもしれないな。そんな話をFさんとゆっくりしたかった。 病院ではいつも、早く家に帰って愛犬に会いたいといっていたFさん。残念ながらその思いは果たせなかった。 夜中にFさんが息を引き取って、奥さんと娘さんはいったん家に戻ったのだが、通夜の準備をしている最中に家の明かりが点滅したり、階段をトントンとあがってくる音がしたそうだ。部屋にいた愛犬が目をあけて、いつもFさんがいたところをじっと見つめていたという。きっと寂しがり屋だったFさんが帰ってきたのだと、奥さん、娘さんは思ったという。Fさんの幽霊は、にぎやか だった。 千駄木にある往来堂書店(https://ohraido.com/)では8月3日から9月30日まで「D坂文庫2024夏」を開催中です。「D坂文庫」は往来堂書店と関わりのある選者がひとり一冊ずつ、おすすめの文庫本を紹介する文庫フェア で、今年は63名が選んだ文庫が並んでいます。ぼくも選ばせてもらいました。文庫にはキャッチコピーと紹介文を印字したオリジナルの帯を巻いてあります。 ミロコマチコさんの書き下ろしイラストのフェア限定のブックカバーもうれしい! 選書を紹介した特別小冊子を販売していて、ブックガイドとしても楽しいです。ぜひぜひ、往来堂書店をのぞいてください! ![]()
by kyotakyotak
| 2024-08-21 21:46
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