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2025年 04月 22日
先日、神保町の東京堂書店に行くと、台の上に新刊の『隙間』1、2巻を中心に高妍のマンガや装丁を担当した本が並べられていた。ネットの情報でこの本が出版されたのは知っていたのだけど、さっそく近所の書店をまわってみた。でも、どこにも置いていない。もっともっと話題になるといいのだけどなあ。 『隙間』の作者の高妍(Gao Yan ガオ・イェン)は台北市生まれのマンガ家、イラストレーターだ。1996年生まれだから、まだ20代。前作『緑の歌 - 収集群風 -』(コミックビーム)は、物語の中ではっぴいえんどの「風をあつめて」や村上春樹の『ノルウェイの森』などが象徴的に使われていて、とくに細野晴臣への“愛”が話題になった。 長編第2作となる『隙間』は、淡い色彩で描かれた青春物語ではなく、もっと自分自身のアイデンティティーに向き合っていて、台湾で生まれ育った自分のこと、台湾と中国のこと、そして留学先である沖縄のことなど今あるさまざまな問題に目を背けず描こうとしている。静かだけれど、熱いものが内側に流れているようだ。 台湾・台北に暮らす女子大生の楊洋(ヤンヤン)は、家庭環境のこともあり、いつも居場所のない思いをしながら育ってきた。ただひとり自分を認めてくれていた祖母は年老いていた。ヤングケアラーとして、懸命に介護を続けていた楊洋だったが、祖母は亡くなってしまう。深い悲しみに沈むヤンヤン。そして想いを寄せていた男性には別の恋人がいることを知ってしまう。過酷な現実から逃げるように、ヤンヤンは交換留学生として沖縄へと旅立った。異国の地・沖縄で楊洋は、下宿先のゲストハウスや芸術大学で沖縄の人々、そして新しい友人に出会う。新しい人間関係の中で自分を取り戻していく。 文学や映画にくわしい友人がFacebookで『隙間』を「これは21世紀の『悲情城市』(侯孝賢)であり『牯嶺街少年殺人事件』(エドワード・ヤン)だ!」と書いていた。 たしかに『隙間』は、恋や友情、異国の文化の違いを描いて留学生の青春ものとして読めるけれど、それよりも台湾が背負っている悲しみや辛さが日本人の読者に伝わってくる。 1947年、日本に代わり台湾の統治者となった国民党政府による台湾人弾圧・虐殺事件「二二八事件」のこと、「白色テロ」といわれる国民党政権が反体制派に対して行った政治的弾圧、そして2014年のひまわり学生運動からLGBTQのこと、同性婚の法制化などさまざまな政治のことが書き込まれている。 国家についても問題が投げかけられる。『隙間』で印象的だったシーンは、中国人の留学生に「中国語を話しているんだから、同じ中国人だよ」といわれたときにヤンヤンが自分は中国人ではない、と主張するところがあった。日本人として育ち、教育されたぼくにはこのときのヤンヤンの怒りを本当に理解できたのか、いまも考える。 さまざまな問題や歴史が語られている『隙間』だけど、それでもちっとも頭でっかちなものになっていない。それは作家自身と思われる主人公が普通の女の子で、特別な事件があるわけでなく、日常の生活で彼女が感じていることをごくごく自然に描いているからだろう。あるインタビューを読んだら、高妍さんは「私が描きたいのは、歴史や政治の教科書ではなく、普通の女の子の青春の話」と答えていた。ごく普通の子と同じように恋愛、交友関係などにも悩んでいることを描きたい、と。 そして沖縄についても描きたいともいっている。 「沖縄について知れば知るほど、沖縄が直面している問題と台湾が似ていることにびっくりしました」 台湾や韓国の本を読むと、ああ、知らないことばかりで恥ずかしいなあ、と思う。台湾、韓国の歴史には日本が大きく関わっているのにあまりにも無関心だったなあ、と恥ずかしい。 以前、台湾での大統領選挙のドキュメントを見たけれど、台湾の人々、とくに若い人たちが夢中で選挙に取り組んでいて、その熱気に驚いた。政治を語り、討論をして自分の考えで投票する、ということが自然に行われているようだった。もちろん、実際はそんなきれいごとではないかもしれない。それでも日本の異常に低い投票率を考えると、日本の民主主義は危険な状態にあるんじゃないかな。 『隙間』の各巻の巻末には作者・高妍による解説がついている。台湾の歴史、国家について、政治と音楽のことなど、高妍が知ってほしいことをくわしく書いている。ああ、知らなければいけないことがたくさんある! ぼくが高妍という若い作家を知ったのはいつだったんだろう? そうだ、7年ほど前に台湾に旅行した友人がおみやげに『緑の歌』というZINEをくれたのが出会いだった。友人は台湾での細野晴臣のコンサートに行ったんだった。 ZINE版『緑の歌』の表紙は淡い色合いの、どこか懐かしい絵だった。マンガというよりイラストレーションという感じ。いまどきのマンガとは一味ちがっていた。といって、おじさん好みの昭和レトロというわけではない。とても繊細ですみずみまで丹念に描かれている。海辺の町に暮らす高校生の女の子がふとしたきっかけで『風をあつめて』聴いて、人生で大切なものになっていく。青春時代の心の揺れをまるで音楽のように描いている。 二十代の若さで、しかも台湾という遠い異国で、こんなにも細野さんの音楽を愛している人がいると知って、若いころからはっぴいえんどを追いかけてきたぼくは、感慨深いというか、とてもうれしかった。だって名曲『風をあつめて』だって、リリースされた1971年には、ぼくは中学生だったけれど同級生たちはだれひとり知らなかったんだからね。それにしても、はっぴいえんどの『風街ろまん』ってリリースされたのは半世紀も前になるんだね。 細野晴臣、はっぴいえんどファンとして高妍さんのことは気になっていたものの、熱心に追いかけていたわけではなくて、ブックギャラリーポポタムでの個展は会期終了後に知って行き損なったし、コミックビームでの連載も知らなかった。じつは2022年に出た『緑の歌 - 収集群風 -』はすぐに買ったものの例によって積ん読になっていて、わりと最近になって読んだ。すみません。(あやまるのもおかしいけれど)。読んでから改めて『風街ろまん』や『HOSONO HOUSE』を聴くと新鮮な喜びがあった。 高妍というマンガ家、『緑の歌』『隙間』という作品、そしてその作品に出会えたのは、細野さんのおかげだったんだなあ。 『隙間』は先日、第3巻が出ていて、物語はまだ続くみたいだ。
by kyotakyotak
| 2025-04-22 21:01
| 本
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