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2025年 07月 24日
ときおりアイリッシュパブの二階で歌っている。シンガー&ソング
つまり自分で歌を作っている歌い手が7、8人ほど集まって自作 夕べだ。プロのシンガーもいれば、まったくの素人もいる。自分 歌う。条件はそれだけだ。パブを貸し切っているわけではないの 楽しみに来たお客さんもたくさん来ている。酔いがまわってくる 賑やかになってくる。特にサッカーの試合があって、地元のチー 祝杯をあげるファンのパーティが始まる。 先日も、ぼくが歌っていると、曲の途中で一階からけたたましい声 渡った。いちおうマイクを使って、自分の声とギターを聞くため があるのだが、まったく用をなさない。思わず歌をやめてしまう だった。トレメローズのヒット曲に「Silence Is Golden」なんていうのが あったな。いつもだったらそれほど気にならないのに、あのとき 欲しかった。 店の厚意で演奏させてもらっているのだから、もちろんお客さんが ではないのは重々承知しているけれど。 それにしても、ぼくたちの生活はたくさんの騒音に囲まれているこ 改めて気づいた。テレビをつければコマーシャルの映像と音響、 スピーカーから音楽が流れているし、音だけじゃなく、道を行く しているように見える。 ぼくたちは沈黙することを忘れてしまった。 『サイレントシンガー』 (小川洋子 著 文藝春秋)を読んでから、ずっと沈黙と音楽、歌のことを 考えている。 著者6年ぶりの長編小説は、読みすすめるうちに静かな空気に包ま 遠くはるか彼方から、美しいメロディが流れてくる。耳をすます 耳に届く静かな音楽のようだ。でも、けっしてBGM( エレベーター・ミュージックという)のように聞き流す音楽じゃ この小説のことを知ったのは、今年の初めのことだった。ある人の 雑誌、文学界2月号に掲載された小川洋子の新作が素晴らしい、 あった。すぐに雑誌を買ったのだが、いつものように積ん読にな いた。もっと早く読めばよかった! 幼かったリリカは母が自殺したため、祖母に連れられて「内気な人 集まって暮らす集落」にやってきた。そこは、「 られていた。ここが物語の舞台だ。 アカシアの野辺に住む内気な人たちは、声に出して話さず、独自の 駆使した指言葉で会話をする。幼いリリカは言葉を話す前に指言 やがてリリカは歌うことを覚える。アカシアの野辺の人たちが子守 歌ってくれたのだ。普段喉を使っていない彼らの歌声は、ささや ないくらいに弱々しかった。 リリカの歌声は、「リリカの胸を満たす沈黙 の中に染み込み、その沈黙に両手を浸し、 差し出している」ようで、「沈黙と歌声」がお互いを抱きとめあ だった。素直で、なぜか、鼓膜に深く染み込んでいく。 リリカは歌とともに人生を歩んでいく。亡くなった老いた介護人の 歌ったドボルザークの「家路」を偶然耳にした役場の職員は、夕 告げる曲に使いたいと録音を依頼した。19歳になったリリカは の仕事を引き継いで「アカシアの野辺」で暮らしていたが、歌の なかった。目立たないが依頼人の希望に沿うリリカの歌は重宝が 人形ポピーちゃんの“声”になって歌う仕事、アシカショーでア 歌う仕事、コマーシャルソング、有名歌手たちの仮歌、少年のお モーツァルト……どの仕事もリリカの歌が特別な色がついていな そのものだから選ばれた。 いつもと変わらない日常を静かに過ごしているリリカだが、歌が少 アカシアの野辺の外に連れ出していく。そして恋に出会う……。 物語は、毎日夕方の5時になると町役場から流れる「家路」から始 ドボルザーク作曲の交響曲「新世界より」第2楽章の旋律に歌詞 聞き覚えのある歌詞は堀内敬三のもので「遠き山に日は落ちて」 タイトルがつけられている。調べてみると野上彰は、この曲に「 タイトルをつけて歌詞を書いている。だが、この小説に登場する 小川洋子によるもののようだ。ドボルザーク「新世界」のメロデ た途端に胸がキュンとする懐かしい気持ちになる。この導入部で は小説の世界に入っていくだろう。毎日、当たり前のように聞い だけど誰が歌っているのか知る人はいない。ミステリアスな展開 ようだ。 アカシアの野辺に住む内気な人たちがつけているガラスのペンダン 結晶の形や透明度が変化する。ああ、これ盛岡の友人に頂いたも 部屋のアクセサリーと思っていたのだが、アカシアの野辺に住む人 野辺で作られるお菓子や料理も美味しそうだし、しばらく暮らし なる。昔、ピーター・ウィアー監督、ハリソン・フォード主演の『 ブック 目撃者』という映画があったけれど、その舞台だったアメリカの いるアーミッシュの人々の暮らしを思い出した。アカシアの野辺 宗教ではなく、ただ内気な人々の集まりであるけれど。 とても静かな物語なのだが、いくつものエピソードが折り重なって ところに落ちていくようだった。登場する人物ひとりひとりにそ 物語が広がっている。 透明感のある澄んだ世界なのだが、とてもグロテスクな、残酷なも でいる。リリカはいつも髪を短くしているのだが、それは母親が で首を絞めて自殺したからだった。祖母はリリカに髪を伸ばすこ 許さなかった。それにしても自分の髪の毛で首を絞めるなんて想 恐ろしい。 ある男の子が森で行方不明となった。行方不明の男の子のために、 祖母は木切れで女の子のいびつな人形を作った。男の子が寂しく よう遊び相手を作ったのだった。祖母はそれから人形をいくつも 湧き水の沼の周りに人形の公園ができる。そこはリリカの密かな になる。手作りの人形たちの輪の中に入っているリリカの姿はどん 見えるだろう? 二匹の羊の角が絡み合い、はずれなくなってしまう。二匹の羊はそ 逃走して森をさまよう。やがて一匹の羊は死んでしまい、朽ち果 残った羊も絡まった角をつけたままやがて沼に沈んでしまう。 美しい文章で描かれていてうっとりとしながら読んでいるが、もし てしまった。 読んでいるといろいろな言葉にハッとさせらる。リリカの祖母の言 印象的だ。 「人間は、完全を求めちゃいけない生き物なのさ」「余分、 反故、不細工……。そういう、不完全なものと親しくしておかな 言葉を発しない人たち、世の中の片隅でひっそりと生きる人たちに 馳せて、別れた人々、朽ちていったもの、失くしたものを静かに 小説だった。 ![]()
by kyotakyotak
| 2025-07-24 22:58
| 本
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