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2025年 08月 24日
楽しみにしていた甲子園の高校野球が始まった。ぼくも半世紀近く前だけど、野球週刊誌の編集者として高校野球特集を作ったり、甲子園のアルプススタンドに取材に行ったこともある。 あのときも暑かったなあ、なんてのんびりしていたら、広島の広陵高校が暴力事件が発覚して2回戦を出場辞退するという大会始まって以来の事態となった。 お気楽にテレビにかじりつく気分じゃなくなった。いつまでたってもなくならない、暴力やパワハラ。今回は広陵高校で問題が起きたけれど、主催している高野連、夏の朝日新聞社、春の毎日新聞社がいままで根本的なことから目を背けて、その場しのぎに選手たちに責任をなすりつけてきたからだろう。若いころとはいえ、高校野球の闇の部分など知ろうともしなかった自分にも嫌気が差す。選手のファインプレーに声援を送りながらも、この裏では陰惨ないじめがあるのかもしれない、なんて思ってしまう。 週刊新潮7月31日号の高山正之のコラムを読んだ。読まなきゃ良かったと後悔するほどひどいヘイトスピーチだった。隣国、外国にルーツのある人への差別意識に満ちた文章が続き、そして唐突に女優や作家の名前をあげて「日本を嫌い、日本人を嫌いは勝手だが、ならばせめて日本名を使うな」と書いていた。 新潮社は謝罪文をホームページに掲載したが、案の定、なんの誠意もない文だった。「力量不足と責任痛感」ってなんなんだ。編集者も校閲も目を通していたはずなのに、問題を感じなかったなんてあり得ない。スルーしなければならない事情があったんだろう。ちゃんと答えてほしい。新潮社の本をたくさん読んでいるファンをこれ以上悲しませないでほしい。 参議院選挙の演説では公然とヘイトスピーチが行われ、核武装まで唱える候補者も現れた。あり得ないことが起こっていて、世の中も流されてしまいそうで恐ろしい。ちいさな流れがやがて洪水となってぼくたちは飲み込まれてしまうんじゃないか。 こんなこと考えていたら熱も出るよなあ。 息が詰まりそうな気持ちでいるときに救ってくれたのが『いわずにおれない』(まど・みちお 著 集英社文庫)だった。 まど・みちおといえば「ぞうさん」「やぎさんゆうびん」などお馴染みの童謡の歌詞をたくさん作った詩人。「やぎさんゆうびん」の詩はシュールで子どものときから好きだった。大好きな加藤和彦、北山おさむ、はしだのりひこがメンバーだったザ・フォーク・クルセダーズもレパートリーにしていたな。古い話だけど。 この本は、2014年2月に104歳で亡くなったまどさんの96歳のときのインタビューと詩、そしてまどさん自身が描いた絵、取材のときに撮影された写真で構成されている。この絵が美しくてびっくり! まどさんのひとつひとつの言葉に思わず落涙しそうになるのは、熱で弱っているせいだけじゃない。インタビューをしている細貝さやかのまどさんの表情や佇まいを伝える文が素晴らしい。喫茶店のテーブルにいっしょに座って話を聞いているようだ。こっそり隣のテーブルにいて耳をすましていたかった。真剣なのだけどユーモアたっぷりのまどさんの言葉にコーヒーを吹き出していたかもしれないな。 普段は意識していないが、ときどき自分の年齢にギクリとする。つい先日も休日診療に対応してくれた診療所に電話をしたときに「おいくつですか」と聞かれ、「68歳です」と答えながら、「あなたはもう老人なのですよ」と自覚を促されているようで、ちょっとしょんぼりした。 この頃思うのは、なにを始めるにも10年先、20年先の未来を考えることが出来ない年齢なんだと思っていたけれど、そうじゃなかった。いや、本当はそうなのかもしれないけれど、当時96歳のまどさんの語る詩への向き合い方、人生の哲学を聞いていると、ぼくもまだまだ生きなくては、生きてやりたいことをやらなくちゃ、と考えるようになった。もちろん、この本は老人向けのものではないので念の為。未来のある、若い人に読んでほしい。中学生のときにこの本を読んで、こんな素敵なおじいさんがいることを知ったら、どんなにうれしいだろう! 詩は「つくる」っちゅうより「生まれる」という感じ、というまどさん。テーブルの上に置かれていたリンゴを見て、美しさにハッとした。なぜ、美しいと思ったんだろうと追求していたら、「リンゴが占めている空間は、ほかの何ものも占めることができない」ことに気がつく。「ものの存在のしかた」が美しく荘厳に思えて、「その素晴らしさを言わずにおれなくなったんです」と1972年に「リンゴ」という詩を書いている。「いわずにおれない」は、まどさんの創作の原動力だったんだ。 やさしいまどさんだけれど、自分にはきびしい人でもあった。じぶんにきびしいからこそ、やさしいのかもしれない。「いのちの尊さをずっと詩にしていながら、第2次大戦中に2編も戦争協力詩を書いとる…そのことを戦後すっかり忘れておった。今となっては、当時の子どもたちにお詫びも何もできないから、とにかく世の中の人に知らせて罵倒していただこう、糾弾していただこうと、全詩集に戦争詩を載せたんです」「いつまたどんなことをするかもわからん。ですから、自分がぐうたらなインチキで時流に流されやすい弱い人間だということを、自戒し続けなくちゃならんのです」と語っているのも印象的だった。 リンゴでもゾウでもノミでもマメひとつぶでも、自分のようなインチキのぐうたら人間であっても、そこにそれがここにおればほかのものは重なっていられない。だからこの地球の上ではどんなものも何ものに代えられない、かけがえのない存在である、とまどさんはいう。 童謡「ぞうさん」は鼻が長いと指摘された子ゾウは、それを悪口ではなくて大好きな母親ゾウと同じなんだと誇らしく思っている。「ゾウに生まれてうれしいゾウ」の歌なんだと語っている。生きている自分を肯定する、存在することを美しいと思うことをまどさんはずっと歌い続けた。 一匹のアリ、ノミ、タンポポから宇宙まで、まどさんの「まど」からは広大な世界が広がっているようで、思い切り深呼吸した気持ちになった。
by kyotakyotak
| 2025-08-24 20:02
| 本
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